見たくないもの、必要ないもの、それでも大好きだったものの存在を。
忘れようとしても、忘れられない。
引き出しに仕舞った思い出があることを、思い出した。
「キレイだ……」
月並みな言葉。
難しい表現をするよりも、それが一番合っているような気がする。
彼女の母親はきっと絵を描くことが大好きで仕方なかったんだろう。
大胆で感情的な絵。
しかし、それでいて繊細で細かいところには色んな色が使われていた。
同じ青でも少しくすんだ青や光が差し、白に近い青など表現の仕方はまるで違う。
その絵を見ていると、ドクン、ドクンと心臓が落ち着かなかった。
僕だったら同じ絵をどう描くだろうか。
必死に塞いでいたフタはどろどろと溶けだした。
収まるはずのないものを、無理やり抑えこんで、消したくても、消せない思い出を無理矢理消した日。
好きなものにインクを乗せ、乱暴にぐちゃぐちゃに塗りつぶしてしまった。
今でも鮮明に覚えている。
”こんなことしたくないのに”
心が叫ぶのを無視して僕は気持ちを閉じ込めてしまったんだ。
彼女の歌に乗せて、僕の腕が動き出す。
震えは未だに収まらないまま、落ちている色鉛筆に手を伸ばした。


