溢れ出る何か、が僕の心を溶かしてく。
彼女の歌には好きが詰まってる。
好きを突き通して、真っ直ぐに進んでいくような声は僕が見たくない、とフタをしたものまで溶かそうとした。
まるでバラバラになったパズルのピースを一つずつ、優しく直していくようなそんな歌声に心が震える。
ぱっと彼女から目を逸らすと、無造作に置かれたスケッチブックが目に入った。
忘れていいものと書かれたラベルを脳内で貼ったそれ。
もう手に取るはずもないと思っていたのに、僕は震える手をそのノートに伸ばしていた。
手が届き、それを持ち上げた時、バランスが崩れてばらばらと、スケッチブックが落ちる。
それをもう一度持ち上げると、表に向いていたのは彼女の母親が描いたであろう海の絵であった。
「……っ……、」
ドキン、と強く心臓が波を打つ。
力強い青で書かれた海の絵。
それはわくわくが抑えきれなくて感情をぶつけるように描いた絵であった。
『誰かに理解されなくてもいいって思える。それくらい自分が好きになればいい』
好きを目の前に全力で描いた絵はまさにこの言葉そのものだった。
その時、僕は思い出す。


