ーーさて、彼女が心に飼っている“愛”についての話でもしよう。
彼女いわく、愛とは二種類あるらしい。
ひとつは温かなもの。優しさや、喜びや、気遣い。誰もが持ってる、誰にでも感じることの出来る“愛”らしい。
そして、もうひとつの愛は大切なもの。
深くて強くて包み込むようなものらしい。これは誰にでも感じるものではなく、お互いに前者の愛を感じて尚、特別な人だけに感じるものだと彼女は言った。
こうして、この世界に溢れてる愛を拾って集めて、心に飼って成長させる。
まるで生きている物みたいに彼女は「愛」を表現するのだ。その見えない何かは彼女にとって生きている証で、それがあるからこそ幸せだと思えるのだと言う。
僕には全然分からない。
それなのに、そんな話をもう何十回と聞かされている。
とてもふわふわした説明は何度聞いたところで同じだけの解釈にしかならないのに。
「ねぇねぇ、今日はね。良いことを思いついたの」
すると突然、彼女は言った。
突然の提案はいつも彼女から。
いいこと、は僕にとってはロクなことではなくていつもげんなりさせられる。
今度は何を言い出すのか、そう思っていた時、彼女は明るい声で言った。


