突き刺さった矢から空いた穴が温かくて、柔らかい空気を取り込んで胸いっぱいに満たしていく。
不思議だ、本当に。
すると、突然彼女が大きな声を出した。
「あっ、アイス買ったことを忘れてた!」
ごそごそと袋の中を探りながら、彼女が取り出したのは一つの袋にふたつのアイスが入ったものだった。
プラスチックの吸い出し口がありスプーンを必要としないもので、彼女はそのアイスを袋から取り出すと、真ん中からぱきんと割り、ひとつを僕に差し出した。
触っただけでも緩くなってしまっているそれを恐る恐るあけながら口をつける。
案の定どろどろに溶けていたそれは溢れるように口の中に流れこんで来た。
「食べやすくていいね」
「そう?溶けすぎでしょ、これ」
ラムネの味が舌に溶けこんで馴染んでいく。それはまるで、僕の心に入りこんで来る彼女のようだ。
「どろどろだ」
小さくつぶやいた言葉に彼女はにっこり笑顔を見せる。
「もっと、どろどろに溶けたらいいね」
彼女が放った謎の言葉はアイスに向けられたものではないことは分かっていた。
何が、だろう。
その疑問を考えているうちに、だんだんとこの胸の内にあった後ろ向きな言葉を打ち消してくれるような気がした。