彼女の問いかけには答えなかった。
プラスチックのフタをして、割り箸を丁寧に紙の箸入れにしまうと、この日僕は卵焼きだけを残してそのまま学校のゴミ箱に捨てた。
愛がある卵焼きと愛のない卵焼き。
食事は満たすためのものと考えれば食べられただろうに、人といるとこういうことに気づかされるから嫌なんだ。
「あ、ちょっと……!」
僕はゴミを捨てたついでにそのまま廊下に出て授業が始まるまで戻ることは無かった。
午後。
昼の心地よい日差しが眠気を誘う中、僕は必死にペンを握った。
一番前に座る彼女は先ほど留年の心配をしていた割には、呑気で堂々と顔を机に伏せている。
ーー何もないんだろうな。
ふとそう思った。
彼女を縛るもの。また自分なんか、と考えてしまうものは何もない。
きっと彼女が住む世界は自由で溢れているのだろう。
ぼんやりとしたまま彼女の後ろ姿を見つめていると、いつの間にか授業が先に進んでいて僕は慌てて黒板の文字をノートに書き写した。


