その日から僕は勉強の合間に少しずつ絵を描き始めた。一度書き始めると、ストッパーが外れたかのように気持ちが溢れだし、それをそのまま筆にのせて表現することが出来た。


止まっていた手を動かすことに躊躇したのは最初だけで、始めてしまえば止める理由さえも見えなかった。


創り出す、何もない場所から。
作り出す、自らが歩む道を。


それが心地良いと思ったのはどのタイミングだっただろう。


自分の考えが少しずつ変わっていくことに不思議と戸惑いは無かった。

あんなに怖いと思っていたのに。

たった一歩踏み出してしまえば自分が恐れていたものは大したものじゃ無かったんだと気づく。


面白いな。


それを知らずに生きていくことも出来たのに。


なんの巡り合わせか、僕は唯一、顔が見える彼女と出会い少しずつ変わっていった。


そういえば、どうして彼女だけ黒塗りじゃ無かったんだろう。


一番初め、考えることを放棄したことが突然気になり始めた。


彼女が僕を変える合図だったのか、仲良くなるというメッセージだったのか。

それとも全然関係ないことか。

そもそも僕のこの症状は改善されるのだろうか。