ある時、そこの本棚の半分程を読みきったK君は、一番大きな本棚の右下の隅の方に隠れるようにして置いてある本を見つけた。
 黒い背表紙に赤い字でタイトルが書かれている。
 しかし、今まで彼はそこにそんな本があることに気づかなかった。
 ここのコーナーに来てから、かなり日にちが経っていたのに。
 彼は不思議に思いながらもその本を手に取ってみた。
『恐怖物語』
 黒い表紙には赤い字で大きくそれだけが書かれている。
 それは見る者に非常に不気味な印象と気持ち悪さを与えるものだった。
 彼もその例に漏れず、怖さで全身が総毛立っていた。
 しかし、その恐怖よりも彼の読書への欲望の方が大きかった。
 彼は意を決してページをめくった。