Aさんからの電話を切ると、K君は彼女の家へと向かうことにした。
 彼女は相当錯乱しているのか「守護霊様が来た」と言うだけで、話が支離滅裂で訳が分からない。
 なら、直接家に行った方が早い。

 数分走ってようやく彼女の家に辿り着いた。
 出迎えた彼女は顔が真っ青である。
 ただ事じゃない。
 彼女の家族も何かに怯えているようで、K君が家に入っても何も言わなかった。
 彼女はそれに構わず、彼を家のある場所へ連れていく。
 そこはお風呂場だった。
 着いた瞬間、彼はまるで背中から冷水を浴びせられたかのような冷たさ感じた。
 扉は閉まっていたが、確実に何か嫌な雰囲気がそこから漏れていた。
 彼は恐れながらもノブに手を掛ける。
 そして、一気に開けた。

 彼は目を疑った。

 誰もいないはずの湯船に張られたお湯が、バシャバシャといくつもの波紋を浮かべているのだ。
 まるでそこに誰かが存在して、歩いているように。