「ただいま美紀」

「お帰りー。どうだったー?」

教室に帰って来た私は、美紀にただいまの挨拶をした。

「大丈夫だってよ」

「そりゃよかったねー。って、んんー?」

「ど、どしたの…」

いきなり美紀が顔を私のブラウスに近づけてきて、クンクンにおいを嗅ぎ出した。

そんな美紀に若干引きながらも、怪訝そうな顔で一歩後ろに下がった。

「なんかさー、煙草臭くない?」

「えっ!?」

バッと効果音がつきそうなほど、勢いよく袖を鼻に持っていき嗅ぐ。

そしたら、あの保健室に充満していた煙草のにおいがバッチリ服に染み付いていた。

「最悪…」

においを嗅ぎながら心底嫌そうな顔をする私に、美紀は首を傾げた。

「てか、どこで煙草のにおいくっつけてきたの?」

「保健室」

「はー?保健室って、煙草吸っていいの?」

「知らないよもう…はあ。最悪」

ガックリとうなだれる私に、美紀はドンマイって言いながら頭を撫でてくれた。

もう保健室には行くもんかと胸に誓いながら、あの保健室の先生を思い出す。

先生のくせに堂々と煙草吸ってるし煙り吹き掛けてくるし、嫌な先生。

それが先生の第一印象だった。







「成瀬、裕子…か」

そう言って、今日で何本目かも分からない煙草に火を点ける。

「おもしれーガキだったな」

そういう先生の顔は、とても意地悪な顔つきだったことを、私は知らない――…。