教科書やノート、筆記用具を閉まって次の授業の準備をする。

すると、

「偉いねー。裕子はー」

と、からかい混じりの声で言う友達の美紀が近づいて来た。

「早く準備すれば、その分美紀と話せるから」

「お、照れるねー」

そう言って頭をポリポリ掻く。

やたら語尾を伸ばしていて、一見チャラチャラしているが、やはり見た目じゃ分からないもの。

美紀はとても心の綺麗な女性だと私は思ってる。

こんなこと、本人目の前にして言えないが。

「んんー?」

そんな恥ずかしいことを心の中で思っていると、美紀が唸りながら顔をズイッと近づけて来た。

「な、何美紀?いきなりどうしたの?」

「んー。顔、赤いからさー」

「えっ」

言われた瞬間頬を手で包み込むようにして確かめる。

すると、少し熱を帯びていた。

「もしかして風邪じゃねー?」

「え、でも風邪の症状出てないし」

「これから出るかもしれないでしょー?だから、保健室行っておいで」

「でも」

「風邪だったら大変でしょー?いいから、行って来なさい」

「ん、分かったよ」

私は、黒い笑みを放ちながら言う美紀に負けて渋々行くことにした。