高校生活が始まって一週間。

まだまだ中学生な感覚が残る微妙な時期。

窓から時折入ってくる春特有の暖かな風が、教科書を2、3ページめくる。

それに合わせ、私の髪をさらりと撫でる。

ノートに数式を書いていた手をいったん休め、髪の乱れを直す。

視線を外にチラリと向け黒板の方に向ければ、ちょっと髪が少ない数学の先生が、熱心に教えている。

だが、高校生と言ったら勉学より遊びや恋を優先してしまうもの。

先生の目を盗んでお喋りをしてる人、机の下で携帯をいじってる人、漫画を読んでる人。

少し周りを見渡せばすぐ分かるのに、先生はずっと黒板に向きっぱなしで熱心に教えている。

そういえば最近できた友達が、

"あのハゲ先生は数学オタクだから、スイッチが入ると周りが見えなくなるんだよー"

って言ってたっけ。

確かに、ここまで数学について熱く語れるのはこの先生…加藤先生だけだろうと思った。

そして、半場自習状態になっていた数学の授業が終わった。