菅井 姫香 side


春、それは出会いの季節。

桜が風で舞い散る中、私は今日から通う櫻愛学園に足を運んでいた。


「(1年C組は…3階の真ん中だ。)」


大きく張り出されているクラス表を確認すると、早速校舎内に入り階段を上る。

壁に展示してある絵やポスターに目を奪われていると、思わず足を滑らす。


「あっ……」


後ろにバランスを崩し、私はそのまま階段から落ちてしまった。

体を地面に叩きつけられ…てはいない。

よくよく見ると、見知らぬ男子の下敷きとなっていた。

私は慌てて立ち上がり、思い切り頭を下げた。


「ごめんなさい!」

「…重いんだよ、気をつけろブス!」

「(え…)」


そう吐き捨てた男子は階段を上り、私の目の前から去っていった。


「何あいつ、無いわ。」

「入学早々調子乗ってるんじゃないっつーの。」


周りの生徒が次々と愚痴をこぼす中、私は彼が行った方向を見つめていた。

菅井姫香、高校1年生。

彼に、興味を抱いてしまったかもしれません。