「夏希ー?もう行くわよ」
次の日の朝。
ゆっくり家を見回ってた私に最後の時が来たようだ。
家の中にはやっぱり何も無くて"ここからいなくなる"っていうことを今更実感した。
外へ出て家を見ると寂しさが胸の奥から湧いてきた。
「ありがとう!マイホーム!!」
色々思い出が詰まった家にそう伝えて母たちの車に乗り込んだ。
「あら?優馬くんに挨拶はいいの?」
「うん!昨日したから大丈夫。今会ったら泣きそうで...」
「ふふっ、夏希は本当に優馬君のことが好きねぇ。そういえば優馬君も引っ越しなんですって?」
「うん、そうらしいよ。でも何処かは聞いてないや...」
「あら、私も聞いてないわ。後でメールで聞いてみましょ」
「うん。そうしよう」
新しい家、どんな所かな?
少しだけど楽しみになってきた。
でも、やっぱり優馬がいないと寂しいな...。
「ごめん。遅くなった...今から出発するぞ〜」
父が遅れてやってきて車のエンジンをかけた。
私は遠ざかっていく家を見て、昔の事を思い出していた_____

