「お母さん?」
「・・・心優?」
「ただいま。」
「……なに、急に!?連絡ぐらい入れてくれたって良いじゃない!!」
「ごめん。前から決まってたわけじゃなくて。」
「さ、荷物貸して。早くあがって!!」
「あ、ありがとう。」
「疲れたでしょう?ちょっと待ってて。今紅茶入れるから。」
「うん。」
久しぶりの家。
何にも変わってない。
だから、落ち着く。
一気に体の力が抜けた気がする。
「紅茶入ったわよ。」
「は―い。」
お母さんが入れる紅茶。
あたしは昔から大好きで、紅茶ばっかり飲んでた。
「昔から、紅茶好きよね。」
「うん。おいしいんだもん。」
ズズっと紅茶を飲み干す。
「もう少し上品に飲みなさいよ。」
お母さんが笑いながら言う。
「毎回言われる気がする。」
「それは心優がいけないんでしょ。で?何かあった?」
急に真剣な顔をして言うから、息が詰まった。
「・・・何も。」
「ふっ。何かありましたって、顔に書いてあるわよ。」
頬杖をつきながら微笑んでいるお母さんの顔を見直した。
「・・・ちょっと。」
「いいのよ、失敗しても。今日帰ってきたのも、逃げてきたわけじゃない。」
「え?」
「誰だって、充電は必要よ。」
お母さんは、そういうと、紅茶の入っていた空のティーカップを片付けた。
「あ、さっき買い物に行った時、秀君と会ったわよ。」
「ふ―ん。」
「会いに行けば?」
「・・・うん。」

