昔から嫌いだった。スクールカーストというもので縛られて成りっ立っているあの教室が……。





 視力0,6。
至ってごくごく普通の視力だ。むしろ悪いほうなのでは?
なのに何故、私は人の考えていることが相手の頭の上に見えるんだろうか。
神よ、私は望んだ覚えはないぞ。

☆★☆★

 あぁ、今日もやってるよ。

……「これ可愛くな~い?」
「何それチョーかわいい!!!《何言ってんだこいつ》」


やっぱりいつも見えてしまう。そんな事思ってないのバレバレだよ……。
寧ろ否定してるじゃないか。

「....ま...ゆり..!まゆりってば!」
「あっ!あぁ、何?」
 
 ヤバい、全然気付かなかった……。

「また、人の心の中覗いてたんでしょ~?趣味悪~い(笑)」
「覗いたなんて人聞きの悪い。見たくなくても、見えちゃうんだよ!!」
「あぁ、はいはい、見えちゃうのね。《どっちも一緒でしょ》」
「今、亜里沙どっちも一緒でしょって思ったでしょ。」
「流石まゆりだね~!」

 
 亜里沙は幼馴染で私のこの能力を知っている唯一の親友だ。
もうみんな分かるだろう。私には“本当の友達”ってやつが亜里沙しかいないのだ。
人間みんな思ってることとやってることが全然違ってるし、すぐに人を裏切る。

 
 まぁ、こんなひねくれた性格の私には1人でも充分すぎるくらいだろう。




ー悪口を言わない人間なんて二次元でしか存在しないに等しいのだから……。





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「ただいまー。」


いつもはギャルの妹が彼氏を連れ込んでるか、ヲタクの兄が引きこもって漫画を描いているというのに、今日はなんと誰も家に居ない。
居るのは猫のしろたさんくらい……。

猫には少し豪華過ぎるくらいのマグロ味の缶詰めを開けてやると、媚びを売りにやって来た。
分かっているのにこれがとてつもなく可愛い。可愛すぎる……。

「ニャー。」
美味しそうに食べるなぁ。

「なんで人って思ってることを口に出さないんだろう。もしかしたら一番人間が弱い生き物なのかも知れないね。」
「ニャ〜。」

全く呑気なものだ。こっちはこんなに悩んでいるというのに、このニャンコロは......。あくびしてるよ。

「なんで人間の心は読めるのに猫の心は読めないんだろうね〜。」

そう言うとしろたさんは、本日六回目となる大きなあくびをした。