「あーあ」
ため息で我に返る。
上坂くんはすべて食べ終わったお皿をテーブルの端に寄せて、お冷を飲んでいた。
まだ15分も経っていない。私はティラミスをまだ半分も食べていない。
「早っ!」
「イラッときて超ガン食いしちゃったよ」
「イラ?」
「あいつって知らなかったときは照れたりするいつきちゃん見るのカワイくて好きだったのに」
「かわい?」
「その顔する相手があいつってだけでイラつく」
軽く手をあげた上坂くんは、セットのうち食後に頼んでおいたデザートを店員にお願いしている。
「……それで話って」
「そんな急かさないでよ。こんなんだけどおれだって緊張くらいするよ?」
時計を見ると、21時を過ぎようとしていた。
まだ睦月さんからの連絡はないけど、メールや電話が来たらと思うことはある。
「あいつにはこの状況、言ってあるの?」
見透かされた質問にグッと声が出そうになった。
この状況。つまり、上坂くんとふたりで寄り道をしていること。
(……言ってない)
「あーららー」
顔の出ていたらしい。
やましいことなんて何もないけど、数時間前にあったことを思い出したらあえて伝えようとは思えない。
心配させたくないし不快にもさせたくない。
「さっそく浮気なんて、いつきちゃんたらー」
「同僚とごはんは浮気になりません」
「おれがいつきちゃんを好きでも?」
ティラミスにさしこんだフォークが止まった。
顔を上げると、頬杖をついた上坂くんがニコニコして私を見ている。
「あー顔真っ赤になってるーかーわいー」
「大人をからかわない」
「気付いてたでしょ?ちゅーだって」
「やめてってば」
不意打ちにもほどがあった。

