あまりの恥ずかしさに撃沈していたら、「すみません」と言いながらも笑っている。
笑ってくれるのは嬉しい。
嬉しいけど、今の状況は全然嬉しくない。
「謝られるとよけい恥ずかしいんでいっそのこと笑い飛ばしてください…」
「申しわ…じゃありませんね。失礼しました」
キリっとしかけたけど頬が心なしか緩んでいる。
ふざけているわけではないってことくらいわかるし、だからこそこんな睦月さんを見られるのは嬉しい。嬉しいけど以下略。
睦月さんはんん、と咳払いをすると今私が来たところを指し示した。
先にあるのはエレベーター。
「…あっち、ですか?」
「ええ。上階で食事をと思いまして」
「上階? ここのですか」
「そうです。ビル内では味気ないかもしれないとは迷いましたが……」
「いえ嬉しいです。勤めてるカフェ以外実は行ったことがないので」
「そう言っていただけるとありがたいです」
「レストランはまだ開いてるんですね。でもそっか、当たり前ですよね」
「少し遅い食事時ではありますから」
(……って、ちょっと待って)
先を行く睦月さんについていくと、今まで乗ったことがない専用の…フロア53-54への直通エレベーターへと向かっていることに気付いた。
フロア42から埋まるホテル階専用エレベーターから上階は全部、さらに少し奥ばったところにあるからだ。
エレベータードアの色も鈍いゴールドになっていて、ホテルの宿泊客や高層階のレストランへ訪れたお客様たちに『特別な空間』を味わってもらうとテレビでやっていた。

