でも今日は違った。
あくまでスタッフとして向かったけど、コーヒーポットサービスだからだ。
こっちも、あちらも仕事中。
身だしなみと振る舞いだけは気を付けてねと念を押されて初めてのお届けだったのに―――
「お帰りなさーい」
店に戻り、スタッフ専用口から裏へと入ると、キッチンにいた上坂圭吾|に声をかけられた。
夕方5時を過ぎたとあって店内はそこまで混み合っていない。お昼の地獄のような光景に比べたらだいぶマシな状態になっていた。
「お疲れさまです。戻りました」
外していたエプロンを付けながら、今日のポットを準備した上坂くんに言わなくちゃいけないことを思い出す。

