(この顔。ってことは)
「ご満足いただける温度ですか?」
私の問いに睦月さんは「あ」と呟くと、少し恥じたように俯いて―――そして頷いた。
「ええ。まだ口にしていないと断定はできませんが、おそらく」
「だといいんですけど」
「これは……香りもまた……結構な……」
(でた、結構)
心の声が漏れないように笑顔を作って、私は頭を下げる。
睦月さんはとても生真面目な人だ。
細かいっていうと悪い印象になるかもしれないけど、初めて会った時に感じた「生真面目」という印象は何度も顔を合わせるうちにより深くなっていった。
コーヒーポットを手にしたときに、取っ手だけではなく全体に少し触れる。
そこで何となく温度をはかっているらしい。
初めて聞いたときは正直「こまか!!」って思ったけど、睦月さんにとっては当たり前のことだった。

