メジャースプーンをあげよう


 ミスター結構とうちの店で呼ばれている彼が、会議室の入口に手をかけて入ってくるところだった。

(さっき来たときはわからなかったけど…)

 全体的に深いブラックの細身のスーツは、光の加減で細いストライプ柄なのがわかる。
 ネクタイは嫌味のないブルーグレイ。
 どこか神経質そうな彼の容姿によく似合っていた。

「あ、えっと」
「定刻に来て頂いたのに、お待たせして申し訳ありません」

 姿勢を正しかけた私の前にツカツカと近付いて来たミスター結構は、きちんと一礼する。
 顔を上げると手にしていたポットを私に差しだした。
 条件反射で両手で受け取り、頭を下げる。 

「こちらこそ、温度の件では申し訳ありませんでした」
「……いや、それは結構です」

(でた。結構です)
(や、じゃなくて。いまなんて?)