メジャースプーンをあげよう


「今笑うとこでした!?」
「いえ。一生懸命で可愛いと思って。……名前通りですよ、本当に」

 睦月さんはため息と共に穏やかに笑って立ち上がる。
 そうして私の手を取った。

「参りましょう。お嬢様」
「お嬢っ…?」
「お姫様がよかったですか?…うん、それも結構ですね」
「全然結構じゃないです」
「はじめさんはよく表情が変わるので楽しいです」
「睦月さんは表情変わりにくいのに突然スイッチ切り替わるから戸惑います」
「スイッチ……? それはたとえば」

 首を傾げながら睦月さんはスッと耳元に近付く。

「圭吾くんに負けないと言うのはこういう意味でもだよ……、とか?」
「……!」

 最後に息をふきかけられ、思わず睦月さんの背を叩いた。

「痛いですよ、はじめ」
「心臓もたないんでホントやめてください」
「これくらいで心臓もたないんじゃ、この先困りますね……」

(はっ? なにそれどういう意味で?)

 至って真面目なトーンで返されて、笑うにも笑えない。
 熱くなる頬を自覚しながらも睨むことしか出来なくて、視線に気付いた睦月さんは唇の端だけあげて笑う。

「俺はけっこう独占欲強いし、わがままなんですよ」
「……少しはわかってきました」
「まだまだ見せてないところもありますからね」
「………ほどほどにお願いします」

 つながれた手の指は今度は絡まない。
 ぎゅっとにぎったり、手のひらをくすぐりあったりしながら歩き出した。






















メジャースプーンをあげよう【完】