「彼が大学で何の勉強をしているか知っていますか」
「いえ」
「経営です」
(ってことは……)
「……上坂くんは自分のお店をもつつもりで?」
「でしょうね。上坂氏が照れくさそうに教えてくれました。いずれ親父も雇ってやる、なんて言われたと」
「でも、それと睦月さんが悪者役になることと関係あるんですか?」
睦月さんは上坂くんにどんなにひどい言葉を投げられても、「憎まれるようなことをしました」と肯定するばかりで何ひとつ否定しなかった。
怒りをぶつける対象は必要といってもすすんで憎まれ役になるなんて―――
「彼は怒りをプラスに変えられる子です。やり遂げてやるという火をつけやすいのも、怒り」
「……ずいぶん買ってませんか? 上坂くんのこと」
「そこは否定したいですね」
「いや実際そうですよ」
「まあ……少しの羨ましさはあったかもしれません。親をまっすぐ尊敬している彼に」
以前都と呼ばれるのは好きじゃないと言いきった睦月さんは、何か思うところがあるんだろう。
遊んでいた指は改めて絡みなおされて、手のひらのあたたかさも伝わってきた。
と思ったら肩に睦月さんの頭が寄りかかってくる。
こんな風に外で甘えられるのは初めてで、かたまった。
「なに……緊張してるんですか?」
「ていうか正直恥ずかしいです」
「ふふ。もう少しこのままで。……あの様子だと圭吾くんは詳細を知ったのかもしれないですね」
「取り返してやる宣言されましたね」
「ああいう目をみるのはとても好きです。……はじめさんも、同じ目をしてた」
「え?」
急に話をふられて戸惑う。
私が、上坂くんみたいな目をしてた?いつ?

