メジャースプーンをあげよう


「あーいつきちゃんの顔真っ赤。かーわいい」

 上坂くんが楽しそうに私へ手を伸ばすと、かばうように睦月さんは私を後ろから抱きしめた。

「あの睦月さん、ちょっと…」
「人の恋人に気安く触れないように」
「独占欲強い男は嫌われますよ?」

 永遠と続きそうなラリーを止めたい。
 ふと気付くと、公園内に点在する人たちがふたりの言いあいに興味津々といった視線を注ぎはじめていた。
 あわてて睦月さんの腕の中から逃げる。

「はじめさん?」
「ほーらいつきちゃんだってお断りだっ」
「いい加減終わってください」

 きょとんとするふたりを思いっきり睨みあげた。
 前みたいなピリピリした空気じゃないとはいえ、ビルの近くでこんな場面…誰かに噂でもされたら大変だ。
 睦月さんは我に返ったように、んん、と咳払いをする。
 上坂くんはえーっと不満そうに唇を尖らせた。

「……失礼しました。つい、はじめさんの事になると」
「決着ついてないのにー」
「上坂くん。気持ちは嬉しいけど…私は睦月さんが好きだから」

 ちゃんと目を見て、まわりが気になって小さな声になったけど真面目に伝える。
 一瞬だけ真顔になった上坂くんは、またすぐにいつもの表情に戻った。

「この先おれがすげーいい男になったらわかんないでしょ?」
「あのね…」
「結構な自信ですね」
「出たよ生結構…」
「生結構?」

(げ!)

「ほら睦月さん! そろそろ戻らなきゃですよ?」
「え? まだ少し余ゆ」
「上坂くん! 私たち戻るから、じゃあ」
「はいはーい」

 誤魔化すように睦月さんの腕をひっぱると、上坂くんはすばやく反対隣にまわりこむ。