メジャースプーンをあげよう


「……あまり見ないでほしいんですが」
「えー、だって可愛いから」
「飲みすぎ禁止ですよ。というか…妙に強気なのはなぜですか」
「睦月さんが可愛いからです」
「大の男に可愛いはないでしょう」

 睦月さんは自分のグラスを手に取ると、一気に飲み干す。
 こんな姿初めて見た。
 かなり動揺しているみたいで、それがまた嬉しいし正直たのしい。

「はいはいそこのバカップルー?ちょっといいですか」
「ゲッ、伏見」

 またもや気配を感じないレベルに伏見さんが立っていた。

「つれないなー。サービスですよ」
「サービス…? そんなものあったのか」
「僕から、いつきちゃんに」
「えっ? あ、ありがとうございます…」
「いいえー」
「あのな伏見……」

 断る理由もないのでありがたくいただいたけど、睦月さんは眉をひそめる。
 本気で嫌がってるわけじゃなさそうなので、そのままテーブルに置かれた真っ白なプレートを見た。

「これ……生ハムですか?」
「うん、僕のオススメ。睦月と食べさせあってくれてもいいよ?」
「しません」
「おまえの前では絶対しない」

 伏見さんのからかい半分な言葉に、私と睦月さんの声が重なった。
 ニヤァと笑ったのは伏見さんだ。

「へえ? おまえの前では、ねえ?」
「なんだ」
「ねえいつきちゃん、睦月のやつ、けっこうむっつりかもよ?」
「ブッ」

 口に含んでいたジンフィズを吐き出しそうになるのを堪える。

(たしかにだいぶ引っかかった言葉だったけど!)
(ハッキリ言われるとどう返したらいいのか)

 でも、言われた睦月さんは平然とグラスに口をつけている。
 照れたり慌てたりしない。かわりにジットリと睨むように伏見さんを見た。