メジャースプーンをあげよう


「いつきさん」
「―――ス、じゃない、はいっ」

(心の声でちゃったし)

 近づきかけていた睦月さんの顔がそこで止まり、重なった手が強く握られた。

「……睦月さん?」
「………いつきさん、俺は」
「はい」
「俺は………いつきさんが好きです」
「…………はいっ?」

 驚いた私に驚き返したのは睦月さんだ。

「はいっ? とはどういう」
「えっだってもうその、……お付き合いしているものだと」

(っていうかそれ!? 今、それ?!)
(絶好のキスするタイミングって思ってたら、まさかのスタート地点!?)

 妄想も暴走も含めて恥ずかしくて今脳内を見られたら死んでもいい。
 睦月さんはあわてたように重なっていない方の手を振る。

「いえもちろん、その気でいました。けれどまだ大事なことを伝えていなかったので」
「……あ」

 そうだった。
 睦月さんに直接気持ちや付き合おうという言葉をもらってなくて、不安に思ってた時があった。
 まだ1か月も経っていないのに、なんで忘れてたんだろう。

(手の繋ぎ方がやらしくて、私の前で俺って一人称にかわることが嬉しくて)
(浮かれて舞い上がってたのかも)
(……私だって大事な事言ってないのに)

「いつきさん?」
「あの……私も睦月さんが好きです」

 睦月さんの左手を両手で握る。
 ちゃんと伝えていなかった。
 大人になってから何となく付き合って何となくわかりあっている気でいて、別れるときだけヒドイこと言いあって。そんな恋愛ばっかりしてきた。
 頬に睦月さんの手が伸ばされる。頬を撫でてくれている。
 きもちよくて、自然と目を閉じた。
 近づいてくる気配。そして、やわらかい感触が唇に触れた。