メジャースプーンをあげよう


(だってひとめ、ひとめぼれって、え!??)

「あれ? 聞いてないの? いつきちゃん、だよね?」

 顔を横に縦に振るのに忙しい私を見て、伏見さんは唇に指を当ててクスクス笑っている。
 キザったらしい仕草なのに全然嫌味じゃない。
 美形って怖い。

「ま、言うわけないかアイツが」

(アイツ……)

 上坂くんが言うそれとは違う、親愛のこめられた「アイツ」。

「……親しいんですか?」
「ん? わりとね。僕たち近いものがあるから」
「近いもの?」
「並列するレベルじゃないんだけど、本質的な話。まずね、僕は見た目で敬遠されがちなんだよね」

(自分で言った)
(でも否定できない。こんな派手な美形、へたに近付けないし)

「で、アイツは家柄で敬遠されがち」
「え?」
「だって超有名でしょ? 都一族っていったら。近付いてくるのはコネや金目当ての取り巻きか、そうじゃなきゃやっかみとか妬み」
「そんな」
「何を成し遂げても都家だからで終わり。睦月の実力だとしても、誰もそんな目で見ない」
「……ひどい」

 伏見さんのオーバーアクションのせいで深刻にならないけど、睦月さんはこれまでどれだけ悔しい想いをしてきたんだろう。

「だからあいつはまたイチからやり直してるんだよ。……ま、このビルに転属になったのは誤算だろうけ」
「伏見」

 いつの間にかテーブルに片腕をもたれて話をしていた伏見さんの肩に、大きな手が置かれた。
 伏見さんは「やっべ」と舌を出し、私と同じタイミングでそっちを見る。
 ロンググラスを両手に持った睦月さんが、目を細くして伏見さんを睨んでいた。
 それを静かにテーブルに置いてから、伏見さんに向き直って腕を組む。