メジャースプーンをあげよう


***

 午後6時45分。
 ポットの回収を約束しているのは午後7時。
 エレベーター利用時間を含めた余裕を持って考えれば、もう店を出ていかなくてはいけない。
 エプロンを外してミラーで身だしなみを整え、取れかけていたリップを塗り直したところでため息が出た。

 だって、またあの人に応対されたらと思うと。

「……上坂くん行ってみません?」
「いつきちゃーん、今の状況わかって言ってるー?」
「ハイすみません言ってみただけです」

 上坂くんは左手でホットサンドが乗ったプレートをトレイに乗せ、レジから渡されたオーダー表を右手に目を走らせている。
 いつもヘラッとしてて軽くて若い子だけど、私より2年も長く働いている先輩だ。