「…リトが大丈夫ならそれでいいよ。もう帰ろっか」
普段無い表情に頑張って口角をあげて気遣っているのが伝わる。幼く頬を膨らませた私は彼について教室をあとにした。
 人のまばらな昇降口を抜け、5センチから10センチの距離を保ちながら学校の敷地内から出る。コンビニに寄ろうと私とロスはのたのたと数人の生徒と同じ方向に歩いて行く。コンビニに入店し、私はストレートティー、ロスはいちごオレを購入し、店を出た。ロスはすぐに500ミリリットルの紙パックをあけ、ストローをさして飲み始めた。
「いつもすぐに飲んじゃうよね。我慢できない人でしょ」
「正解」
こういうときこそ人は素直に笑う人だとと思うんだけど、彼はそんなことはしないみたいだ。変なの、と呟きながら通知の鳴る携帯に目を集中させていた。
「通知鳴り止まないね」
「ヒロと連絡取ってる」
「ああ、今日ヒロと会うんだっけか」
「そうそう、テスト期間だって言ってたじゃん。今日来てくれるんだって」
「それはこっちも同じだけどね」
「まあそうなんだけど…」
表情の乏しいロスに言われると気持ちが読めずに反応に困ることがある。コンビニを抜けて、角を曲がり、私たちは駅の方面へ向かっていた。
 今日は、中学校の時に仲の良かったメンバーの一人、ヒロと私たち三人で待ち合わせる日だ。