普段、学校帰りの電車待ちは時間が合わないとこういう30分程度待合室で待つことがある。せかせかしている学校生活から少し息の抜けた感覚になるためこの時間は嫌いでは無いが。
「そんな遊びまで俺じっとしてられないんだけど」
「30分って授業1コマよりも短いだろ」
「んっ学校やめた人間に言われても困るぞ!やめろ!」
まるで猫のようにクラは俺をにらんできた。…アルバイトも当てはまると思うのだが、クラにとっては別なのだろうか。これ以上は言わないことにしよう。
「んで、飲み物とか買うんじゃなかったの」
「ああ、そうだった。買ってくるわ」
ぐいっと扉を開け、クラは近くの自動販売機の方へ向かった。ふと、現実に引き戻され、待合室にいる人々の視線を独占していたことに今気づく。ずっと見られている訳ではなく、ちらちら、なにこいつみたいな冷えた目で。思わず舌をぺろっとだした。誰も見ているわけではないのだが、首だけ申し訳なさで一礼。近くの長いすに座った。
 1分もたたずしてクラは戻り、俺の隣に座った。
「何買ったの」
先ほどより気持ち声を小さく話しかけた。
「コーラコーラ。最近買う機会を逃して炭酸飲んでなかったんだよね」
クラは全く俺の配慮に気づかず通常の声のまま、うれしそうに答えた。
「中学の頃から炭酸好きだよな」
「まあね。でも小学校くらいの頃は飲めなかったんだけどな」
「ああ、純粋だったからとかそんな感じ?」
クラは飲む手を止めてこちらをにらみ、頬を膨らませた。