「ああ、クラ…春希か」
「なに驚いてんだよ」
へらっとクラは笑った。笑顔はあんまり変わってない。そりゃそうか。1年くらいだもんな。
「チャラくなったな」
「校則に縛られる必要はないからな」
「でも働いてるんだろ?」
「まあ、髪色これくらいなら大丈夫だし、流石にピアスはしないし」
無意識にかクラは右耳を触っている。2つ3つついてるピアス。どこにどんな意味があるとか名称とかはよくわからないが多いな、と思っていた。
「ふーん、ならいっか。てか、チャット返事よこせよ。寝坊したのかと思ったじゃん」
「お、マジ?気づかなかった。さっきの電車で来たんだけど」
「俺と一緒じゃん。なにこのすれ違い」
「マジかよ。奈央たちは次の電車なのな」
チャット画面を開きながらクラは呟いた。…ボキャブラリーが貧弱なところも変わってないなぁなんて笑みがこぼれる。
「そう。もうすぐ来ると思うけど」
現在の時刻は9時50分。5分後には次の電車が着く。
「あーね。そろそろかあ。かなり待ってたんだけど」
「かなりっていっても30分くらいじゃん」
「30分ってくそ暇じゃね?」
「電車待ちこんな感じだからなぁ…」
うわ、とクラは顔をしかめる。