若干眠かったから、まなみとの会話の内容を詳しく覚えていないが、お母さんが悲しんでるのが申し訳ないとかお父さんが怖いとか、引きこもりということが情けないとかそんな話を聞いていた。ぼんやりと思い返すのは高校1年生のころ。にこにことした表情が威力だったなぁなんてことを考えていた。俺が学校をやめる時点で人間関係や学校であんなに疲弊してるとは思わなかったし、そのあとすぐに不登校になって自主退学してしまったのも申し訳ないとは思っている。一応。そこまでしてしまったら俺も責任取らなければなという最低な考えで今を生きている。…これは誰にも言っていないが。
 数時間他愛もない話をしていた。時間も時間だということで、俺自身も眠かったし、通話を終わるかと促した。切ることになり、眠い目をこすりながら、少しばかり安心している自分がいた。
「明日に響かないようにね」
「おうよ、またね。…好きだよ」
「私も好きだよ、おやすみ」
プツッと通話が切れる。嘘。嘘なんだ。告白した俺が浅はかだったよ。中学生のうちに告白しておけばよかった。退学する前に別れればよかった。

 俺はもう中川まなみを好いてはいない。

 浅はかな申し訳ないからという後ろめたさで連絡を取り合い、適当に愛の言葉を囁いて。引きこもりのまなみは精神状態がかなりもろいことをしっているからなおさら、俺は言い出せずにいる。