しかし、何ヶ月も廃人をやっていると少しの寂しさや心にあいた小さな隙間すら耐えられなくなってくるのだ。段々と人間でなくなってしまうような錯覚さえ覚える。気づいたら、キーボードを打ち、メッセージを送信していた。
「おはよ」
「また起きちゃった」
ぐだる。こんな時間にあいた穴は次第に広がっていく。そんなあなぽこになった私は読まれない事実を受け入れることすらも耐えられない。虚無に負けないように、トーク画面を閉じた。携帯のアプリの通知を一通り見ていき、ぶつぶつコミュニケーションやゲームをしたりしながら1時間経過した。携帯画面の光を見てしまい、さらに目が覚めて携帯を投げ出した。眠れないのも当たり前だ。布団に頭まで潜る。
 しばらくたった頃、携帯がピコンと何かを通知した。慌てて見ると
「そっか」
「明日休みだし通話する?」
と春希からのメッセージが届いていた。ぐん、と心臓の脈打ちが早くなる。返信を慌てて打つ。
「うん、したい」
自分でここまでしておいてなんだけれども自分勝手かなって思う。枕元にある絡まったイヤホンをそのまま装着し、彼からの着信を待つ。着信、受信。
「もしもし」
春希の声は少しだけ小さかった。夜だからなあということを実感する。実家暮らしだから家族が寝ているせいもあるんだろうな。
「もしもし。お疲れ様」
「あざっす」
笑い気味な声だった。少しだけ安心する。私はあなぽこになった心を埋めながら、とある事に思考を巡らせていた。
 二時間ほど話したところで光の混ざった暗さになってきた。重い体を起こしてカーテンを開くと、オレンジやら黄色やら様々な色がある。夜明けだ。
「もう、明るくなったね」
「それな、俺結局あんま寝てないんだけど」
「ごめんね…」
楽しく感じてしまっていた自分に一抹の罪悪感を覚える。