こんな自分や人間関係も馬鹿らしいとは思うが、時間をかけて作った関係を今さら壊せるほど人脈もなければ強くもない。根暗な男だと嫌われているのも知っている。横になり、悶々と考えていると、ピロンと携帯が音を発した。見てみると「まな」からのメッセージ。心臓が止まったかと思った。なぜ、彼女が俺にメッセージを送ってくるのか。意思のない彼女のことだからヒロに言われるままにメッセージを送ってきたんだろう。容易に想像ができる。心臓をばくばくとさせながら、彼女とのトークの画面を開く。
 それはとても簡潔な言葉だった。
「初くん、久しぶり。元気にしてる?」
俺の名。普段学校の人間には名字で呼ばれているから何となく新鮮というか、数年前に引き戻される感覚に陥った。
「久しぶり」
と俺も淡々と返す。1年前の出来事があってからほぼ関わらなくなってはいたが、連絡先は消していなかったようだ。
「そこそこやってるよ、そっちはどう?」
「私もそこそこやってるよ」
そこそこじゃないだろう、本当は。学校もやめて。引きこもっているくせに。
「そっか」
「あ、あと聞きたいんだけど。奈央ちゃん、元気?」
ズキリと胸が痛んだ。若干呼吸もしづらくなる。じんわりとした熱が体に染み渡っていく。俺はおまえが言うのかなんて思っていた。けれど、こいつには意思がないから。意思がないからこんな考えなしのことを言うんだ。そう言い聞かせ、返信をした。