「あ、そこはフリでいいよ~!
まあ、したいならしてくれた方が
よりいっそうリアルに見えるからこちらとしては嬉しいけどね」
と、脚本を書いた女の子が言っている。
それを聞いていた千鶴ちゃんが口を開いた。
「だってさ~、翼。どうする?しちゃう~?」
少し冗談っぽそうに言った千鶴ちゃん。
あたしは黙って耳だけを傾けて下を向いて台本を見てるフリをしていた。
「それは本番のお楽しみだな」
翼くんも冗談っぽそうに言ったけど、彼ならきっと当日…千鶴ちゃんにキスするだろう。
だって、好きな人だもん。
そう思うのにズキンッと胸が痛む。
あたしもシンデレラの役がよかったなぁ……なんてバカげたことを思う。
あたしがシンデレラになんてなれるわけないじゃん。



