それから、伊藤くんは普通に接してくれてあたしも普段通りに接した。

伊藤くんは優しいよ。

普通ならこんなやつに振られたりしたら
話したくもないはずなのに優しく笑ってくれているんだから。



────…いつか、伊藤くんのことを大好きになってくれる人が現れますように。



「じゃあ、莉乙ちゃん。

向井のこと絶対振り向かせるんだよ」


伊藤くんは柔らかく笑った。

あたしはコクンッ、と小さく頷いた。


「伊藤くん、ありがとう。これからもよろしくね」


あたしが笑顔でそう言うと伊藤くんも“こちらこそ”っと返事をするかのように笑い返してくれた。


それから、伊藤くんはあたしの家まで送ってくれて、

あたしを送り届けると、また来た道を歩いて帰っていった。


あたし、頑張るから。

朱里や伊藤くんからの応援に胸がとてもあたたかくなった。

そっと、胸に手をあてて目を閉じる。


────…絶対、振り向かせるからね。


そう心に誓った。