「んじゃあ、行こっか」
「うん!」
緊張して上手く笑えてるかわからない。
だけど、伊藤くんは気持ち的に一歩前に出てあたしをリードしてくれている。
ほんとに優しいんだな…それを見ていてそう思った。
「なかなか、寒くなってきたね」
季節は秋。
肌寒くなって来る頃、衣類では衣替えをする時期だ。
去年のこの時期は翼くんに夢中だったなぁ……とか不意に思う。
また、あたし翼くんのこと考えている。
もう、忘れるんだってば。
いいかげん、頭から離れてよ。
「ほんとだね。手とか冷たい」
今日に限ってカイロ忘れちゃうし。
「じゃあ…手繋ぐ?」
そう聞かれて、驚いて伊藤くんを見るとあたしの返事も聞かずにぎゅっと手を握った。