「いやー…だっていう手段がー…」
「あんたね、こういう時のためにスマホっていうもんがあるんでしょうが」
そういって自分のピンクのスマホを人差し指でトントン、と叩く。
あ、確かに。
あのときのあたしはなんかぼーっとしててそんなこと考えてなかった。
「まあまあ、落ち着こう。朱里」
一旦、朱里を落ち着かせるのが先だ。
朱里を興奮させたまま話すと色々とめんどくさい。
口調がいつもよりも悪くなって怖くなるし。
「うん…。で、続き聞かせてよ」
「それでさ────…」
朱里はいつもの朱里に戻っていたからあたしはこの前あったことをすべて話した。
あ、でもちゃんと翼くんが好きな人がいることは黙っていた。
黙ってるって言っちゃったもん。
約束は破っちゃいけない。
約束という約束も交わしていないんだけどね。
