「そ、それぐらいわかってるよ………」
だって、あたしと翼くんは何の関係もないんだもん。
千鶴ちゃんと翼くんみたいに幼なじみでもなければ、友達というわけでもない気がする。
あたしが一方的に好きなだけで翼くんはあたしのことをただのクラスメイトだとしか思ってないんだもん。
翼くんみたいな人があたしに構ってくれてること自体奇跡なんだって。
「絶対わかってねぇだろ」
ツン、と翼くんの人差し指があたしのおでこを軽くつつく。
だんだんとおでこが熱くなっていくのが分かる。
「翼くんは……好きな人…いるんでしょ?」
気付いたら、口からそんな言葉が零れていた。
ハッ、として自分の口を両手で抑える。
あたしってば、何聞いてるんだろ。
そんなの聞いたって悲しむだけなのに。
そんなあたしの質問に翼くんは一瞬だけ
驚いたような顔をしたけどすぐに普段通りの余裕な表情に戻っていた。
「知りたい…?」
落ち着いた翼くんの声。
どうしよ。
翼くんの好きな人がいるのか今なら知れる……
噂が本当なのか、聞ける。
けど、どこか聞きたくないっていう気持ちもある。



