「てか、気づいてなかったわけ?」
「う、うん…」
まったく、気づかなかった。
ここに戻ってくるまで誰ともすれ違わなかったし。
それが、不幸中の幸いだな。
「はぁー…マジでお前気を付けろよ。
いつでも俺がそばにいてやれるわけじゃねぇんだから」
翼くんはため息混じりにいうと、
ぽんっ、とあたしの頭の上に手を置いて優しく目を細めて
まるで、子犬の頭を撫でるかのようにワシャワシャ、と手を動かした。
浴衣の間から見える程よくついている筋肉。
ちょうど、それが視界に入るから
顔が熱を持ち余計にドクドクッ、と心臓がうるさい。
なんか、下着見られたことなんて
どうでもよくなっちゃうぐらいあたしの頭の中は翼くんのことでいっぱいだ。



