「乗りたくねぇの?」
「だ、だってあれは……」
言っていいのかわからなくて、言葉に困る。
すると、翼くんはあたしの前に立って俯くあたしの顔を覗き込んだ。
「だって、なに?」
あまりにもいつもとは違う優しいその声の音色に
言おうか迷っていた言葉がまるで魔法にかかったかのようにするりと口から出た。
「あ、あれは…翼くんの彼女になれるまで乗りたくない」
ずっと、昔から思ってた。
観覧車は“好きな人”と乗るんじゃなくて、“彼氏”と乗りたいって。
だって、好きな人だとなんか彼氏でも無いのに虚しくなるじゃん?
ただのワガママと偏見だけど。
「っ……」
翼くんからは何も聞こえてこない。
うわぁ…やっぱりドン引きしちゃった?
“誰がお前なんか彼女にするかよ”とか思ってる?
ますます、顔があげられなくなっちゃったよ。