4月。
今日からわたしは高校2年生になる。
クリーニングしたての制服とピカピカに磨かれたローファーを身にまとい、いつもより少し弾んだ気持ちで校門をくぐった。
「ももー!!今年も同クラだよ!!
しかもしゅんもなのー!!やばくない!?
今年楽しくなる気しかしないわ〜」
そう言ってわたしに勢いよく飛びついてきたのは、園山梨華。
りかはわたしの幼馴染みであり親友でもある。
わたしと同じ吹奏楽部でわたしと同じトランペットパート。
共通点が多いせいか、昔からりかとは何かと気が合いかれこれ10年くらいの仲になる。
りかは、頭はクラスでもトップ3にはいるほどのバカだけど文化部のわりに運動ができて さらさらのロングヘアーをいつも高い位置で結んだポニーテールがチャームポイントの可愛らしい女の子。
典型的なモテタイプ。
自分では自覚ないみたいだけどね...。

わたしとりかは一緒に教室へ向かった。
クラスにはまだ誰もいなくてわたしとりかの2人だけだった。
「ちょっと早く来すぎたね。」
「そうかも。」
すると廊下から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「ん?誰だろ?」
2人同時に教室の入口の方を見た。
「おー!!りかと花田!! ってかまだ誰もいねーんだな!!」
そういって入って来たのは、りかと1年くらい前から付き合っている香川 舜。
香川くんは小学校の頃からの知り合いで、唯一私が嫌いではない男子。
話しやすいし、何よりりかの彼氏何だから仲良くしないととは思っている。
「あれ?しょうた?
何してんだよ。早く入れよ〜。」
香川くんが誰かを呼んだ。
しょうた?誰だっけそれ。
なんか聞いたことある名前。
「あ、おう。ってかいいのか?」
「全然!!って逆になんでダメなんだよ!?」
「いや〜、何か2人で話してたからさ〜。」
そう言いながら入ってきた人の顔を見てわたしはその人が誰かはっきりわかった。
そう。この人こそ学年1の王子。
桜庭 翔太くん。
スラっとした長身にほどよくついた筋肉が男らしい。
さらに目鼻立ちがはっきりしていて、焦げ茶色のサラサラヘアーからはシャンプーのいい匂いがする。
まぁ世間で言うイケメンってやつだ。
あれ?一瞬胸が大きく高鳴った...のは気のせいだろう。
だってわたしは1年の時から男嫌いだからだ。

1年の頃、わたしは男子にいじめられた。
毎日毎日大声で悪口を言われたり、廊下をすれちがっただけで睨まれたり...。
前はどちらかというと男子とはよく話すほうで、仲のいい男子も多かった。
だけど、1年の頃からわたしは男子との関わりを一切断ち切った。

だから、学年1のイケメンだろうが何だろうがわたしにはどうでもいい。
男子にまったく興味がない...はずなのに。
さっき...何だろう...。
胸がドキッと大きい音を立てた。
いや、そんなわけない。
自分でも自分の感情がわからない。
うそ。うそだ...。
これって...。
もしかして____________。