「ちょ、ちょっと、笑実ちゃん。近所迷惑になっちゃうよ?
ここまだ駅じゃなくて良かったね。」


駅まではもうすぐだ。

だけどさっきの声量で駅にいたら、電車を待つ人達に確実に睨まれていたと思う…。


「そんなことはどーでもいーよっ!それよりむぎちゃん!
ホントにそれだけ?」


「どーでもいいの?え?それだけって?」


「だって、その話聞いてると、
むぎちゃんが大翔に壁ドンされてるようにしか、思えないんだけど…?
壁ドンされて、むぎちゃんなんとも思わなかったの?」


「えっ?壁ドンって、あの、壁にドンって手つくやつだよね?」


「うん、そうだよ?それ、されたの。むぎちゃんは。大翔に」


「まっさかぁー!だって、壁ドンじゃなかったよ?まず壁じゃないし…音だって、全然気づかなかったから、“トン”くらいの強さだよ?」


「いやいやいやいや、むぎちゃん?
壁ドンは、ドアだろうが壁だろうが床だろうが…
あっ、床は床ドンがあるか。と、とにかく!
ドアでも何でも壁ドンと同じ状況だったら、壁ドンなの!
ドアにトンって手ついたからって、“ドアトン”とかにはならないからね!?」


「えぇぇぇぇ!!そーなの!?でも、あれはドアトンだよー。」


「ないから!そーゆー造語は作らないっ!
むぎちゃんは、それにドキッとしなかったの?」


「えっ?ドキッと?何で?どっきりじゃあるまいし。」


「いやいや、胸がドキドキしたりとかだよ。恐怖心とかじゃないから。」


「そーいや、私がよろけてひろに支えてもらった時、
私ひろにしがみついちゃったみたいなんだけどさ、
その時のひろの心臓の音、すごく早かったんだよ!
よっぽど入学式に緊張してるんだって思ったら、なんだか笑えてきちゃったんだけど、
私の心臓も、つられるように早くなっちゃったんだよね。
何でだろー。ひろは、ついに催眠術でも手に入れたのか!」


「いや絶対ちがうでしょ。」


笑実ちゃんにツッコまれた。