ケータイを見ると、
お母さんからひろのお母さんと先に帰っているとのメッセージが届いていた。
下校中は、四人で一緒に帰る、といっても、四人で喋らない時もある。
誰かと二人で喋るときもあるし、四人で喋るときもある。
今日は、私と笑実ちゃんと二人で
朝から満員電車で大変だったことについて盛り上がっていた。
「…でね!もう窮屈で窮屈で!」
「分かる!あんまり身動き取れないし…。」
「そうそう!でもね、今日はひろが守ってくれたから、助かっちゃった。」
私たちは話に夢中で、いつのまにか前を歩くひろと柊斗と、ずいぶん距離が離れてしまっていたことに気づかなかった。
「守ってくれたの?あの大翔が?」
「笑実ちゃん!失礼だよそれはー。でも、ホントに守ってくれたんだよ。
私をドア側に立たせてくれて、その前に立ってくれたの。
電車が曲がったときも、私にぶつかりそうだったんだけど、間一髪でドアに両手をついて体勢を整えたんだよ!」
「そうなんだ…って、うん!?」
急に笑実ちゃんが立ち止まった。
「笑実ちゃん?どうしたの?」
「む、むぎちゃん。大翔、手、ドアについたの?むぎちゃんのすぐ横にある、ドアに?」
「うん。ついたよ。そのせいで、ちょっと顔近く感じたけど、
まぁ、ぶつかるよりいいよね!」
そう言って私が笑ったら、
「むぎちゃーーん!?」
笑実ちゃんがすっとんきょうのような声を出す。