高校の最寄り駅に着いて、降りる私たち。
同じ制服の人が、ちらほら見える。
「ふぅー、やっと着いた。」
喋っていた時間よりも喋っていなかった時間の方が圧倒的に短かったはずなのに
心なしか、喋っていなかった時間の方が長かったような気がした。
「息苦しかったなー。」
「そうだねー。そーいえば、お母さん達がいない…。ちゃんと降りれたかな…?」
キョロキョロと周りを見渡してみるけど、お母さん達が見当たらなかった。
「大丈夫だろ。『高校で』って言ってたし。」
ひろは私を安心させるように笑って、片手をポンと私の頭に置いた。
この仕草が、私は落ち着くんだ。
昔から、私が泣いたり落ち込んでいた時に、こうやって頭をポンポンしてくれた。
「そーだね。ありがとう!」
吊られて私も笑った。
「っ。」
反射的に顔を反らすひろ。
「ひろ?どうしたの?大丈夫?何かあった?」
私はひろが急にどうしたのかとびっくりして、私はひろが顔を反らした方に行って
俯いてるひろの顔を覗きこんだ。
「…!」
ひろは、私がこんな行動に出ると思わなかったのか、驚いて目を見開いて
「…むぎ、ダメだってこれは。」
そんな意味深な発言をして、パッと顔を上げた。
「ダメ?何がダメなの?」
「…!俺、何か言ってた!?」
「え?無意識?『むぎ、ダメだってこれは。』って言われたんだけど。」
「…いや、ダメじゃないダメじゃない!ごめん、むぎ。何もないから。」
「…そう?……まーいっか!」
なんかひろ変だけど、入学式よっぽど緊張してるんだね。
私はなんだか微笑ましくなって
「ふふふ」
と誰にも気付かれないように笑った。