「むぎ、俺から離れんなよ。」
「え?う、うん、ありがとう!」
きっとチビの私を見失わないように言ってくれたんだと思う。
いつも何かと色々心配してくれるんだよね。感謝してます。
「きゃー、大翔くん、いつからそんなイケメンゼリフ言えるようになったのよー!」
「今のは我が息子ながら、カッコいいと思ったわ~。」
「紬は、幸せ者ね!」
私たちのやり取りを見て、お母さん達がはしゃぐ。
え?確かに私は幸せ者だと思うけど…、今のセリフって、そんなイケメンゼリフだったの?
っていうか、イケメンゼリフって何?
「え?私たちはいつも…モガッ!」
“私たちはいつもこんな感じだよ?”と言おうとしたのに、
ひろが私の口を塞いだことによってそれは憚(はばか)られた。
「何もないから!むぎはほら、方向音痴だろ?
だから、高校まで迷って入学式遅刻なるかもって思って!」
そう言ってひろは私の口から手を離してくれた。
「ぷはー!ちょっとひろ!私は方向音痴なんかじゃないからね!」
私はひろに抗議の目を向ける。

