「何で“ごめん”も、疑問形なんだよ。
何でもねーよ、さ、行くぞ。」
ポン、と1回だけひろは私の頭に手をおいた。
「あっ、うん!ちょっと待ってよー!」
二人で駅の改札を通り抜ける。
「電車通学って、憧れだったんだよね~~!
ほら、定期だよ~!学生だよ~!」
私は自分の定期をひろに見せた。
「お前は何が言いたいんだよ。
電車通学が憧れって…通勤ラッシュとかしんどいぞ?」
ひろは、呆れたように苦笑していた。
「う~ん、それとこれは別!」
「別なのかよ。」
今日は入学式だから、新しい制服に身を包んだたくさんの生徒と、そのお母さんがいる。
「うん!別!あっ、お母さんたち!やっと来た~!もぅ、遅いよ?」
改札を通ってやって来たお母さんたちに言う。
「いいじゃない、ちょっとくらいー。佳奈と喋るの久しぶりだったんだから~。」
「とか言ってお母さん、春休みもめっちゃ会ってたじゃん!」
「高校生の頃は毎日会って喋ってたんだから、それに比べたら少ないわよ?」
「お母さんは高校生じゃないでしょー?それじゃ、会ってなかった大学はどーなの?」
「大学生でも、ちょくちょく会ってたのよ~。」
「いつでも会ってるんじゃんっ!」
私はお母さんにツッコんだ。
「えぇ、それでもまだまだ話したりないのよ~。」
「絢音、紬ちゃんもそこら辺にして、ほら電車来たわよ。」
「うわっ、人数多!」
「入れる?これ。」
やって来た電車は、既に人でいっぱいだった。
さらにそこにたくさんの人が乗るのだから…押し潰されちゃいそう…。

