松岡さんは、ニコっと笑顔で言った。
「夢は、見るもんじゃねぇ―よ!」
コバさんは立ち上がり、透き通っていた声からいきなり雷が落ちたかのように声を荒げた。
「急になに言ってんだよ。夢は見るもんだろう。見て叶えるように努力するのが夢だろ? お前、前はそんなこと言わなかっただろ? どうした?」
「……ひよっちみたいに、簡単に夢を見られなくなったんだよ。生まれも育ちもいい人には分からないよ」
右手に拳を握りしめて、コバさんは下に俯いていた。
松岡さんは、黒目だけ左側を見て悲しい顔をしていた。
その目は、私が知っている目ではなく、哀れでもう思い出したくない目をしていた。

