多数の本を見れて、個性溢れるお客様が来る。

お話を遠くから聞いて、自分の思っていたことと異なる話が聞ける。

 ここ以外にもアルバイトをしてきたが、普通のアルバイトとは違って、いろんなものを吸収できる。

 滅多にない経験だ。

 一ヶ月経って、そのことに実感した。

 古本屋『松岡』のアルバイトを勧めてくれた松岡さんには、今となっては感謝している。

 私はアルバイトのやり方には慣れてきたが、お客様はくるみさんのお客様ばかり。

 それより気がかりなのは、もう一人の従業員。

くるみさんと私とあと一人誰なのだろう。
 松岡さんにそれを聞くと、いずれ来るからと言うだけ。

いずれとは、一体いつのことやら。

 埃が被っていると思われる古本をパッパッと掃除をしていた。

 すると

「こんにちは」

 古本屋『松岡』のお客様では見たことが無い人が来店してきた。

「……」