諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます



「君も、夢を追っているのかい?」

 早下さんは、この店が熱いのか額の汗を右手に持っていたハンカチで拭き取っていた。

 ハンカチで拭ったあと、目を細めて私に聞いてきた。

「はい、まあそうですね」

 見知らぬ人からいきなり声をかけられたので、戸惑いつつも返事をした。

「頑張って下さい」

 早下さんは私にそれだけ言い、中年集団の会計を終えるのを待って、出ていった。

 昇哉は、最後尾にいた。

その会計は、私が行った。

くるみさんがすると思っていたけど、昇哉と話をしたいから会計しておいてと私に任せたのだ。

くるみさんと昇哉はテーブルで楽しそうに談話していた。

 話の内容は聞こえなかったが、二人の関係性が気になった。

 大手事務所の関係者とモデルを目指している女性。

だけ、ではない気がした。

 それだけで、昇哉はくるみさんに頭を撫でたり、髪を触ったりするだろうか。

 くるみさんは、昇哉に顔を近づけて笑いあっていた。

 何なんだろう、あの二人の関係性? 

 松岡さんの彼女ではないのか?

 二人のことをチラチラと見ながら、会計を済ませ終えた。