「昇哉」 「なんだよ」 「もっと私頑張るから。だから、本だけは買っていてね?」 満面な笑みでくるみさんは昇哉に言った。 「……はあ、それは分かってるよ。いつものことだろ?」 昇哉は、くるみさんの笑顔に降参したのかため息をつきながら言った。 「……ありがとうございます!」 くるみさんは礼をして、笑顔で答えた。 「じゃあ、本選びますか」 カバンを肩にかけてから昇哉は後ろを振り向き、中年集団に声をかけた。 中年集団もよし、本買うか―と言い、古本の棚を見始めた。